離婚後の子どもはどちらが引き取るの?~親権と監護権について

離婚の際、お子さんをどちらの親が育てるのかという点も議論になります。

この記事では、お子さんの「親権」と「監護権」の説明をします。

親権とは

親権とは、未成年者の子どもを監護・養育したり、子どもの財産を管理したりする権限や義務のことをいます。親権者は、法律上、その子どもの代理人として権限を行使することができますが、子どもの利益のために行使することとされています。親権の内容は、大きく分けて、「身上監護権」と「財産管理権」があります。

身上監護権

身上監護権は、子どもの利益のために監護教育する権利義務をいいます。身上監護権をさらに細かく分類すると、①居所指定権、②懲戒権、③職業許可権があります。また、④妨害排除請求権(子の引き渡し請求権)も親権をもとに主張できます。

①居所指定権

親が子どもの住む場所を指定する権利です。

②懲戒権

子どもに対して監護教育に必要な範囲で、懲戒、しつけをする権利をいいます。もちろん、懲戒権があるからといって、虐待や行き過ぎた行為は違法であり、許されません。

③職業許可権

子どもが自分で営業したり、雇用されて働くときに、それを許可する権利をいいます

④妨害排除請求権(子の引き渡し請求権)

子どもが連れ去られたり、不当に拘束されたりしている場合に、お子さんを引き渡すよう請求する権利をいいます。

財産管理権

親権者がお子さんの財産を管理し、その財産に関する法律上行為を子どもに代理する権限をいいます。さらに細かく分類すると、①(狭義の)財産管理、②代理権に分類されます。

①(狭義の)財産管理

お子さんの財産を管理する権利義務です。法律上、「自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない」とされており、責任をもって管理する義務があります。子どもの財産を親が私物化するということは親権の範囲を超え、許されません。

②代理権

親権者は子の代理権があります。例えば、相続等で子どもが取得した不動産を維持管理したり、売却することこともできます。子ども名義の預貯金口座を開設することもできます。

もっとも、無制約に認められるわけではなく、子の利益のために行使しなければなりません。

子どもの利益と親の利益が相反することを「利益相反行為」といいます。例えば、親権者の借金のために子の名義の財産を担保にしたり、遺産分割協議で親権者とその子が相続人となる場合は、親権者が子の代理をすることはできません。利益相反行為は法律上無権代理といい、権限がありませんので、無効となってしまいます。この場合は家庭裁判所に対して、特別代理人の選任を請求しなければなりません。

親権は誰が行使するの?

未成年の子に対する親権は、父母が共同して行使することが原則です。

しかし、父母が離婚する場合は、父母が共同して親権を行使することができません。そこで、父母のいずれかを親権者として定める必要があります。実際に離婚届を提出するときは、お子さんの親権者をどちらにするのか記載する欄があります。この欄を記入しなければ、離婚届は受理されません。また、離婚の裁判でも、裁判所が父母のいずれかを親権者として定めることとなります。

親権と監護権の関係について

先ほど、親権の具体的な内容を説明しました。その中に、「身上監護権」がありますが、これを単に「監護権」と呼んでいます。監護権は親権の一部ですから、親権者がこれを行使するのが原則です。

しかし、実際には、親権者と、親権者ではないが監護する者(「監護者」といいます。)が別々となる場合がありえます。例えば、「親権者は父親としたが仕事が自宅にいないことが多いため、子どもの世話は母親がしている」「最初親権者を母親として母親が子どもを引き取ったが、病気等の事情で、父親が子どもを引き取った」というような場合です。

親権者はどうやって決めるの?

話し合いで離婚する場合は、どちらを親権者とするのか決めます。すでに述べたように、親権者を決めなければ、役所で離婚届が受理されません。

話し合いで親権者をどちらにするか決められない場合には、離婚調停の申立てをして、その調停の中でどちらが親権者となるのか等を協議することになります。

調停でも折り合いがつかない場合は、親権者指定の審判手続きに移行します。審判では裁判所が父母のいずれが親権者として適切かどうかを判断します。

離婚についても折り合いがつかない場合は、離婚訴訟を提起する必要があります。この離婚裁判では、裁判官がいずれを親権者とするのかを判決の中で命じることとなります。

一度決めた親権者を変更することもできます。この場合、親権者変更の調停や審判の申立てを家庭裁判所に行います。必ず認められるわけではなく、例えば、母親を親権者として離婚が成立したものの、母親が子を虐待する等の事情が判明して子どもの利益が害されているとき等の例外的な場合に変更が認められることとなります。

親権者になるためには?

まず夫婦で話し合いをし、どちらが親権者となるか協議する必要があります。

それでも決まらない場合は、調停、審判、裁判(訴訟)に移行していきます。

調停は話し合いの手続きですが、親権について双方の主張が対立している場合、家庭裁判所調査官による調査が実施される場合があります。また、これは審判や訴訟でも同様です。この家庭裁判所調査官の調査報告書は、実務上非常に重要であり、裁判官もその内容をかなり参考にしています。それでは、これら調査や裁判官の判断の中で、どのような点がチェックされているのでしょうか。

具体的には、例えば以下のような点チェックされています。以下の事情に限られるわけではなく、個別具体的な事案において、様々な事情を総合的に判断されています。

・監護能力
・これまでの子育てへの関与度合
・子どもに対する愛情
・収入などの経済力
・親などの代わりに面倒を見てくれる人がいるかどうか
・代わりに面倒を見てくれる人の監護能力(年齢や収入など)
・住んでいる自宅の状況
・生活環境
・子どもの年齢や性別、発育状況
・環境の変化が子どもの発育等に与える影響の有無や程度
・兄弟姉妹がいるかどうか(それぞれが別れて生活することにならないか)
・子どもの意思はどうか

なお、15歳以上の子どもの親権を審判や裁判(訴訟)で決める場合は、裁判所が子ども本人の意向を聞かなければなりません。裁判所は子どもの意見を尊重して判断をします。

父が親権者になるのは難しいのでしょうか?

たしかに、実務上、母親が親権者となることが多いように思われます。理由としては「母親優先」と裁判所が決めているというよりも、現状を変更することが難しく、その結果として母親が親権を取得することが多くなるということであると考えられます。また、子どもが乳幼児である場合は、子の監護の中心的な存在は母であることが多いので、親権者に母がなる(審判等で母が指定される)ことが自然ではあります。しかし、これも絶対ではなく、例外的な場合には父親が親権者となることもあります。お子さんの年齢によっては、父親が中心となって監護養育を担当してきたようなご家庭の場合は、父親が親権を取得するケースもあります。

相手が不倫をして離婚をする場合は、親権者となれるのですか?

「不倫をしたような人が、親権者になれるのでしょうか」というご相談をいただくことがあります。お気持ちは理解しますが、不倫をしたからといって、親権者として不適格となるわけではありません。他方で、不倫をしている期間、子どもの育児を放棄していた等の事情があれば、監護者としての適格性がないと判断される場合があります。このように、あくまで子の利益という観点から、具体的に判断していくこととなります。

子どもを連れ去る行為は判断に影響を与えますか?

夫婦が別居しているときに、子どもを監護していない親(非監護者)が、無断で子どもを監護者のもとから連れ去る等の行為に及んだ場合は、親権者の適格性を判断するうえでは、大きなマイナスとなりえます。

面会交流をしているかどうかは、親権を判断する上で考慮されますか?

面会交流の実施状況は、裁判所がチェックする事情の一つです。

面会交流に非協力的であるよりも、協力的な方が親権者として指定されるうえではプラスの事情ではあります。もっとも、そのことのみによって判断されるわけではりません。

弁護士にお早目のご相談を

親権は離婚の際に大きなポイントとなります。また、一度決めた親権者を離婚後に変更することは、かなり例外的な事情が必要となります。

それにもかかわらず、離婚して親権者を決めた後に「やっぱり私が親権者になりたい」というご相談があります。しかし、親権者の変更は容易ではありませんから、タイミングを失してしまっているという場合もございます。

親権は感情的にも対立することが多くあります。

当事務所では、これまで多数の夫婦間問題を解決してきました。親権についても幅広い経験とノウハウがありますから、まずは一度お気軽にご相談をしてみてはいかがでしょうか。