離婚で多く寄せられる相談の一つが「モラハラ」です。
この記事では、モラハラと離婚について弁護士が解説します。
目次
「モラハラ」ってどういうこと?
モラハラとは、「モラルハラスメント」のことをいい、言葉や態度等により人格や尊厳を傷つけたり、精神的な暴力や嫌がらせをしたりすることを言います。夫婦間だけでなく、職場での人間関係など様々な場面で使われる言葉です。
モラハラに関するご相談の特徴として、モラハラをしている側(加害者側)には自分がモラハラをしているという意識がなく、また、モラハラをされている側(被害者側)にも自分がモラハラを受けているという意識がないことが挙げられます。
これってモラハラ?モラハラチェックリスト
自分の夫(妻)の言動がモラハラなのかどうか、以下のチェックリストで確認してみましょう。もしチェックの数が多い場合、モラハラの被害を受けている可能性があります。
- ☑長期間、無視されたことがある
- ☑LINEを送っても長期間未読のままにされたことがある
- ☑夫(妻)の言うことは絶対であり、自分から指摘することや、言い返すことができない
- ☑夫(妻)の帰宅時間が近づくと動悸がしたり、恐怖心を感じたりする
- ☑夫(妻)が不機嫌にならないよう、常に気を遣っている
- ☑夫(妻)の許可がないと美容室、ネイルサロン、友人との外食等に行くことができない
- ☑夫(妻)からセックスを求められると、断ることができない
- ☑生活費が足りなくなると、夫(妻)に相談することができず、自分の貯蓄を切り崩したり、カードローンやリボ払い等をしたりして対応することがある
- ☑夫(妻)から嫌な言動があっても「自分が我慢すればいい」と考えてしまう
- ☑結婚してから、自分の友人に会ったり、趣味を楽しんだりすることがなくなった
- ☑仕事をさせてもらえない、就職先を限定されるなど、行動を制限される
- ☑夫(妻)が掃除や料理、買い物など細かなところまでチェックし、不完全なところを見つけようとする
- ☑夫(妻)から嫌味を言われる、「バカ」、「クズ」、「常識がない」などの言葉を使われる
- ☑食事をつくっても、気に入らないとそれを食べず、別の物を食べる
- ☑目の前でため息や舌打ちをされる
- ☑(専業主婦(主夫)の場合)「誰のおかげで生活できると思っているんだ」と言われたことがある
- ☑「男は仕事、女は家事と育児」といった役割分担意識へのこだわりが強い
いかがでしたか?上記はあくまで一例として示したもので、モラハラには様々な言動があります。
ここで注意しなければいけないのが「モラハラ」という言葉は法律用語ではなく、厳密な定義があるわけではないということです。「モラハラ」といえる言動であっても、自動的に離婚ができるわけでもありませんし、慰謝料などが発生するわけではないのです。
モラハラ離婚の難しさ
周りに相談できないこと、相談しても理解してもらえないこと
まず自分がモラハラを受けているということに気づかないことが多くあります。そのため、結婚してそれなりに長期間婚姻生活を継続しているようなケースも多くございます。
また、モラハラの言動は日常的に受けているため、一つ一つを記録しているわけではなく、友人や親に相談をしようとしても、その具体的な内容をうまく伝えることができず、夫婦喧嘩の延長と思われがちです。
特に、親御さんの世代は、いわゆる「亭主関白」という言葉が広く知られているように、「少し強い言葉を使う夫」程度にとらえてしまう場合もあります。
モラハラに苦しんでいる方の中には、弁護士に相談したにもかかわらず、モラハラの言動が記録されていないことからうまく伝えることができず、単なる「性格の不一致」のように扱われてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
モラハラ夫(妻)は離婚に応じてくれない
モラハラ夫(妻)の特徴として、離婚に応じないということが挙げられます。
モラハラ夫(妻)はプライドが高く、相手配偶者からの要求に応じないということが多々あるのです。
モラハラ夫(妻)は配偶者を自分の支配下に置いていると思い込んでいるため、その支配下から配偶者がいなくなることを過度に嫌がり、突然「俺(私)が悪かった」「もうしない」などと反省の言葉や謝罪をして、婚姻関係を継続しようとすることが多くみられます。モラハラの被害を受けていると、感覚がおかしくなってしまい「優しい夫(妻)にもどってくれる」と錯覚をしてしまう方がいらっしゃいます。
このようなことから、そのまま婚姻関係を続けているという夫婦がいることも現実です。
しかし、モラハラ夫(妻)は「自分が正しい」「相手が間違っている」という考えを持つ傾向が強いため、相手の気持ちを理解、想像することができません。そのため、上記のような反省の言葉を口にしたとしても、それによって自身の言動が改善される可能性はとても低いのです。
法律上の「離婚原因」に必ずしも該当しないこと
離婚は当事者双方が離婚するということで合意ができれば、離婚することができます。しかし、一方の配偶者が離婚に応じない場合は、離婚訴訟(裁判)で強制的に離婚が命じられない限り、離婚することができません。裁判所が強制的に離婚を認めるときの理由を「(法定)離婚事由」といいます。
※離婚の原因についてはこちらからご覧ください。
モラハラの場合、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが争点になることが多いのですが、この「婚姻を継続し難い重大な事由」のハードルが高く、なかなか裁判所が判決で離婚を命ずるということが難しいのです。特に、モラハラは日常の中で生じるため、録音や録画等の記録がされておらず、被害者の供述程度しか証拠が残っていないことが多くあります。加害者がモラハラ行為の存在を否定すると、被害者側がそれを立証することがとても難しいのです。
モラハラ離婚をするための7つのポイント
①証拠を確保する
モラハラの言動は証拠が残っていないことが多くあります。しかし、離婚協議を進めていく上で、いつ、どこで、どのような言動があったのかを具体的に整理すると、より説得力が増します。もし証拠がないと「そのような発言はしていない」という水掛け論になりがちです。
録音できれば一番良いですが、難しい場合は、LINEなどで言われたことをその都度記録化しておくことをおすすめします。
②生活設計を行う
次に、モラハラ夫(妻)と別居した場合の生活設計をします。具体的には、ご実家に引っ越すなどコストを最小限に抑えた選択肢があるかどうか、必要な生活費の計算、夫(妻)から婚姻費用(生活費)を払ってもらえる場合の見込み額などをあらかじめ計算しておくことが安全です。
何も準備なく引っ越してしまうと、ご自身やお子さんの生活に支障が生じてしまうためです。
場合によっては公的扶助を申請できるかどうかも考えた方がよいでしょう。
③弁護士に相談する
お一人で悩んでいると、うまく進めることができなかったり、大切なことを見落としてしまったりということもありえます。遠慮なく弁護士に相談をしてください。そして、弁護士に依頼をして、支援体制を確保することが重要です。
なお、モラハラ夫(妻)からの発言でよくあるのが「自分には法律に詳しい知人がいる」「知り合いの弁護士がいる」などと、あたかも自分には味方がいて優位にあることを示す場合があります。これは私の感想ですが、大半はこのような「詳しい知人」や「知り合いの弁護士」という人は存在せず、相手方を怖がらせるために言っているに過ぎません。
④別居する
生活設計ができて別居しても生活できる見込みが立ったら、モラハラ夫(妻)とは別居することが大切です。モラハラ夫(妻)に悩んでいる方は、一緒にいることで強い精神的な負担が生じますから、同居を継続することは困難だからです。
別居することは事前に相手方に伝える必要はありません。
⑤生活費を確保する~婚姻費用の請求
相手方が婚姻費用を負担する場合は、別居と同時に、モラハラ夫(妻)に対して婚姻費用の請求をしましょう。内容証明郵便やメール、LINEなど、請求した日時が記録に残る方法を使ってください。婚姻費用の請求を求める調停を申し立てることも有効です。
⑥離婚が成立するまで決意を持ち続ける
モラハラ夫(妻)は、別居の状態を受け入れることができず、様々な攻撃をしてくる場合があります。あなただけでなく、両親、友人、職場に対して電話やLINEなどで執拗に連絡をしてくることがあります。可能であれば、別居する前にあらかじめ両親などには事情を説明して、協力を求めることがよいでしょう。
他方で、モラハラ夫(妻)は、突然、「自分が悪かったから、やり直したい」、「自分が変わるから信じてほしい」等と反省の言葉をいい、別居を止めて家に戻ってきてほしいとお願いしてくることもあります。しかし、そのような言葉を信じて同居を再開しても、最初のうちはモラハラ夫(妻)も言動に注意が続きますが、そう長く続かないのが実際です。
このようなことから、離婚が成立するまでは、離婚の決意を固く持って、離婚協議、調停を継続していく必要があります。
⑦離婚とその条件を協議する
別居をした上で、相手方と書面などで離婚を求めること、その条件を具体的に話し合っていく必要があります。電話や面談での協議の場合、モラハラを受けていた側はうまく自分の意見を言うことができない場合が大半です。そのため、書面でのやり取りがお勧めです。
このような協議を自分で行う自信がない、仕事や家事育児に忙しく自分で対応するのが難しい、といった方は、弁護士に依頼して、弁護士に代理人として協議を任せる方がよいでしょう。
弁護士に依頼した場合に行ってくれること
弁護士はモラハラ離婚の依頼を受けた場合、あなたに代わって、モラハラ夫(妻)と離婚の協議を行います。連絡窓口もすべて弁護士に設定しますから、モラハラ夫(妻)からあなたに直接連絡がいくことはありません。
また、話し合いでうまくいかない場合は、依頼者と協議の上、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行います。この申立ても弁護士があなたに代わって行いますから、かなりの手間やストレスから解放されます。
また、弁護士法人美咲総合法律税務事務所に所属する弁護士は数多くの離婚事件を解決してきた実績がありますから、様々な状況に応じて、適切な対応、アドバイスをすることができます。
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モラハラ夫(妻)に悩んでいらっしゃる方は、まずは弁護士に相談されることをおすすめいたします。
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