離婚後のお金の問題

「相手の浮気が原因で離婚をするので、慰謝料を請求したい…」
「夫と離婚をしたいと考えているが、収入がないのでその後の生活が不安…」
「二人で築いた財産に関して、どのように分ければ良いか…」

いざ離婚をしたいと考えたときに問題になるのが、お金の問題です。離婚そのものに対する慰謝料もそうですが、その後の生活費や子どもの養育費等、整理しておかなければならない問題はたくさん存在します。

離婚に関するお金の問題として、慰謝料、財産分与、養育費、婚姻費用、強制執行のポイントを下記に詳しく解説しております。

不倫やDVなどを受けた場合、「慰謝料」を請求できる場合がある

離婚をすることとなった原因に、相手方が不倫をしていたり、DVなどがある場合、精神的な苦痛があるとして、慰謝料の支払いを求めることができます。

ただし、単なる性格の不一致や価値観の相違、不法行為に至らない程度のモラハラでは、慰謝料は発生しません。

慰謝料をいくら請求できるのかは、事案によって異なりますので、一概に申し上げることができません。たとえば、不倫があった場合の慰謝料の金額には、不倫していた期間、婚姻期間、未成年の子がいるかどうか、不倫の発覚によってどのような影響が生じたのかなど様々な事情が影響します。

不倫期間が1年以上にわたっているとか、10年以上の婚姻期間があるなど、それだけ信頼を裏切られ、精神的苦痛が増大すると考えられますので、慰謝料が高くなるといえます。

慰謝料は、不倫をした配偶者だけでなく、不倫相手に対しても請求することができます。法律上、不倫をした配偶者と不倫相手の二人とも支払う義務があるからです。不倫をした配偶者のみ、もしくは、不倫相手のみを請求することもできます。

ただし、理論上「請求ができる」と言っても、不倫相手が誰であるのかわかなければ、請求することはできません。LINEのアカウントだけしかわからなかったり、「職場の同僚」という情報しかなければ、残念ながら、実際に請求していくことは困難です。

また、証拠の問題も重要です。不倫をした配偶者や不倫相手が不倫したことを認めていれば話は別ですが、相手方が不倫を否定している場合、請求する側が証拠を準備しなければなりません。

LINEのやり取りなどをみて「不倫をした」と即断することはできません。親密な雰囲気を感じるLINEのやり取りがあっても、それだけで不倫を証明することはできません。不倫、つまり、肉体関係があったことを証明しなければならないのです。

実務上、探偵の報告書が有用であることは多いです。探偵の報告書でよくある内容が、ラブホテルに入っていくところと、ラブホテルから出てくるところが写真や動画におさめられています。このように、ラブホテルに一定時間滞在したのであれば、肉体関係があっただろうと言えるからです。

不倫の慰謝料請求の中でよくある反論が、「すでに妻(夫)との夫婦関係が冷め切っていて、夫婦関係は破綻していた」という主張です。「破綻の抗弁」と言ったりします。しかし、裁判所がこの「破綻の抗弁」を簡単に認めることはありません。すくなくとも、同居している夫婦について「破綻していた」という認定を裁判所がすることは、かなり例外的な事案でしょう。「会話がない」「挨拶もしない」などという話はよく耳にしますが、それだけで「破綻」とはいえないのです。このような反論をされることを想定して、家族旅行にいったときの写真や動画、日常の中で家族が一緒にいる写真や動画等があるよいでしょう。

注意点としては、慰謝料請求には消滅時効があります。請求をしないまま時間が経過すると、その請求権は消滅します。

いつから時効を計算するのかというと、「損害および、加害者を知ったとき」から3年間です。ただし、夫婦間については、離婚と同時に請求できる状態になることが通常ですから、「離婚時」から3年が経過すると時効が成立するのが一般的です。

不倫があったことを知らないまま20年を経過した場合も、消滅時効で請求ができなくなります。

夫婦で形成した資産がある場合に「財産分与」で1/2ずつ分けることができる

離婚をするとき、結婚後に夫婦で築いた財産を清算することができます。基本的には1/2ずつわけます。

財産分与の対象となる資産は、以下のようなものが代表例です。

・不動産(土地、建物)
・自動車
・預貯金
・生命保険などの解約返戻金
・株式などの有価証券
・貴金属などの価値のある資産

あくまで婚姻期間中に形成した財産を清算するというものですから、婚姻前から所有している財産はここに含まれません。

また、当該配偶者の親族などから贈与を受けたものや、相続で承継したものも、夫婦で築き上げた財産ではありませんので、財産分与の対象となりません(「特有財産」といいます。)

財産分与の話し合いを進めるにあたって、以下の資料を準備することで、話し合いがスムーズに進みます。

・預貯金通帳
・給与明細(自営業者は確定申告書)
・不動産の登記簿謄本
・住宅ローンを組んでいる場合は残高がわかる資料
・保険証券
・証券口座の残高等が記載された書面

離婚成立までの生活費は「婚姻費用」として請求する

別居をしていても、夫婦である以上、お互いを扶養する義務があります。通常は、収入が高い方が、収入の低い方に対して、生活費を支払います。これを「婚姻費用」といいます。

通常、裁判所が公表している「算定表」を参考にして金額を定めます。お互いの収入額を基準に判断します。源泉徴収票の総支給額に記載された金額をもとに、算定します。

離婚後のお子さんの費用は「養育費」として請求する

離婚後のお子さんにかかる費用は「養育費」といいます。離婚後は、元配偶者に対する扶養義務はなくなりますから、元配偶者の生活費を支払う義務はありません。

養育費も、婚姻費用と同様に、裁判所が公表している「算定表」を参考に決めます。

養育費を決める場合、単なる口約束ではなく、公正証書として残すことをお勧めします。なぜなら、養育費は、お子さんが成人になるまで支払ってもらうものですから、形に残すことで確実に支払ってもらうという意味に加え、万が一、支払いが滞ったときに強制執行をするためにです。単なる合意書では、すぐに強制執行の手続きをとることができないのです。

厚生年金や共済年金等については「年金分割」を検討する

慰謝料、養育費などを請求し忘れることはありませんが、「年金分割」は後回しにしがちです。しかし、夫婦の片方のみが働いている場合など、年金分割を行わなければ、老後の生活資金を確保できない場合もあります。

「年金分割」と聞くと、年金の受給額のうち半分を請求できるように思われますが、実際は異なります。たとえば、夫が会社勤めをしていて、厚生年金を受給できる場合、妻が年金分割により請求できるのは、婚姻期間中に相当する分で、なおかつ、厚生年金部分のみ(国民年金部分は含まない)です。

年金事務所で必要な手続きがありますので、お近くの年金事務所にお電話の上、詳しく事情を確認してください。

2008年に「3号分割」という制度ができました。これは、相手の合意が無くても半分を分割できるというものです。勘違いしてはいけないのが、この3号分割を利用できるのは、2008年4月1日以降に国民年金の第3号被保険者(専業主婦)だった期間のみです。

つまり、2000年8月に結婚をして2009年10月に離婚をした人は、2008年4月~2009年10月までの期間のみが「3号分割」。あとの2000年8月~2008年3月までの期間は、相手との間で分割割合の合意を定める必要があります(合意分割)。

合意分割は、調停の実務上、0.5(つまり半分)にすることが大半です。しかし、インターネット等で誤った情報をもとに話し合いをすると、2~3割しか受領できないと誤解してしまうリスクがあります。

相手が支払いをしない場合は強制執行を! 

慰謝料や養育費、婚姻費用の支払いを約束したのに、約束した日に全額または一部が支払われないということがあります。

裁判を経て判決で支払いが命じられているや、調停で合意をした場合は、そのような裁判所が発行した書面をもとに、裁判所の強制執行という手続きを利用することで、支払いを強制することができます。当事者間での合意であっても、公証人役場で公正証書として作成し、なおかつ、強制執行認諾文言が付されている場合にも、同様に強制執行が可能です。

強制執行の対象としては、以下のような財産が考えられます

・給与(賞与)
・預貯金口座
・保険の解約返戻金
・不動産

実務上、給与(賞与)や預貯金に対して強制執行をしていくことが多いです。